筆不精の備忘録

読書や映画鑑賞の感想を書き留める習慣をつけようと思っていた時期が私にもありました…

日本がグループリーグでスペインと対戦してたかもだって!?

W杯が開幕しましたな。といっても僕はサッカーはど素人なので、W杯はちょこっとテレビで見てわーわー言うくらいやけど。

 

まぁそんなレベルだからサッカーのゲーム自体には何も書くことはないんだけど(選手も良く分からん)、そんなミーハーなアナタでもW杯をバーで見ながら隣にいる男女諸兄をナンパするきっかけになる話のネタがありましたよ。これで恋愛をサッカーに例えて「このタイミングは中盤でボールをキープや」、「今日のコンパでは俺がクロスあげるからお前がゴール決めてくれ」などという恋愛偏差値(と文字通りの偏差値)の低い会話をしなくても済む訳ですね。実にありがたい!

 

という訳で本題、「本当だとGL(グループリーグ)で日本はスペインと対戦してたかもよ」、という撒き餌から始まるそれなりに知的な会話。ちなみに元ネタはこれ


Coupe du monde 2018 : comment tricher au tirage au sort grâce à une formule mathématique

 

というかこの記事ほぼこれの紹介。でもこのLe mondeの数学とか統計を駆使したW杯小ネタ集めっちゃおもろいんよなー。他にも、なんでサッカー選手はあんなにシュミレーション(反則されたフリ)すんのかとか、PKでなんで上狙った方が統計的には決まる確率高いのに下に蹴ってしまうのはなぜか、とかあった。

 

さて今回のW杯、GLのB組で優勝候補の一つスペインはこれまた優勝候補のポルトガルと対戦したわけですが、そもそもなんでGLからこの二カ国の対戦なんていう事態になったのか?

A、スペイン(とポルトガル)のくじ運が悪かったから

 

…ということでは必ずしもないんですね!!

 

知ってる人には蛇足だけど、そもそもW杯の対戦方式は、本戦に進んだ32チームがGLで4チームずつ8つのグループに分かれて総当たりし、上位2チーム(×8グループ=16チーム)がその次のトーナメントに進める、という仕組みだ。

その時にグループリーグで強国ばっかりが固まらないよう、本戦に進んだ国でFIFAランクの上位7国(+開催国)、上位8~15位、以下…というように4ブロックをつくって、それぞれのブロックから一カ国づつクジを引いてGLの組を作るようになってるいると。

 

そこで今回のポルトガル対スペインで考えると、あんな強いくせにスペインが第二ブロックに入ってたのが悪い!ということになる。

…じゃあなんでスペインが第二ブロックに入らなければいけなかったかというと、それはその時にスペインのFIFAランクでは上位7カ国に入れなかったから。

…じゃあ仕方がない?いえいえ、実はFIFAランクの算出方法自体に問題があったわけですな。まずそれがどういう算出方法かというと、

 

結果の勝ち点(M)×対戦国のFIFAランク(T)×大陸別連盟(C)×試合の重要度(I)=試合毎の獲得ポイント(P)

 

ここで分かりにくい後者二つを補足しとくと、大陸別連盟ってのは対戦国が南米かヨーロッパかそれ以外(アジアとか)かで係数が変わってくるという話で(ちなみに係数は順に1.00、0.99、0.85)、試合の重要度は親善試合とか地域予選とか、W杯本戦とかいった試合の重要度によってこれまた係数が変わってくるという話。

そしてFIFAランクはこの獲得ポイントについて、過去4年を12ヶ月毎の4つに分け、それぞれの期間で平均値を出し、それらが直近の12ヶ月から100%、50%、30%、20%の割合で計算されて算出される(つまり4年経つとポイントは失効する)。

 

つまりW杯本戦のGLを決めるクジの際のFIFAランクは、クジ以前の12ヶ月間の獲得ポイントの平均点が100%で割合で最も加味されることになるんだけど、ここに大きな穴がある。

というのも、平均点を出すというのは「期間内に行われた全試合の獲得ポイントの合計÷試合数」ということなのだけど、そもそも試合毎の重要度係数が異なるのだから、単純に試合数で割ると重要でない試合(典型は親善試合)を多くしている方が不利になる。

Le mondeの例えでいうと、最高でも10点満点にしかならないテスト(親善試合)と、20点満点のテスト(W杯予選)の平均値を出したら、最高15点という何の意味もない数字が出てくるだけだ。

そしてテストだと受けない選択肢はほぼないが、親善試合だと行わないという選択肢がある(結果テストの平均値は20点になる)。そしてLe mondeによるとその選択肢を行ったのが…ポーランドだというわけ。

 

というのも、クジ引き時のFIFAランクが決まる直近の12ヶ月で、ポーランドが親善試合を一回しか行っていないらしい。対してスペインは3試合。そしてくじ引き後にポーランドは親善試合を6回行い、一時はスペインよりランク下になっている。そうやってポーランドは第一ブロックに滑り込み、GLでは全部格下との対戦になって、スペインはGLからいきなりポルトガルと対戦することになると。かつGLの順位が次のトーナメントの組み合わせにつながっていく…ポーランド恐るべし。

 

というのが「ポーランドがこの戦略を採用してなかったらスペインが第一ブロックに来てGLで日本と対戦してたかも」という話のカラクリなんだけど、まぁ日本の立場で言えば正直ポーランドが来ようがスペインが来ようがどっちも勝ち目ないので関係ねー。それにこの戦略を採用出来るほどのランクでもないのでさらに関係ねー(採用したところで第3ブロックに滑り込みがせいぜいでしょう)。

 

あとさすがにFIFA側もこの算出方法の問題に気づいたらしく、最近計算式を変えたらしいので(どうなったかは知らん)、これは過去の話になるかもらしい。

もう一つ余談で言えば、上の話のロジックでいうと親善試合というのは勝っても大したポイントにならんどころか時期によってはお荷物、ということだけど、連盟&主催側にはかなり大きい収入源になるらしい。そうした金銭面の利益+経験値としての練習試合というメリットと、FIFAランク下げるデメリットを天秤にかけて…ということでしょうか。